競馬予想のABC

**初の単行本「超競馬考」発売中!**

競馬予想をする上で理解しておくべき基本について書いておきます。
今夏発売の「超競馬考」と重複する内容もあります。

この記事で書く内容は、競馬予想をはじめたての人やライトファンはもちろん、競馬歴の長い人もおさえておくべき内容です。いわば「競馬予想の土台」と言うべき内容で、この上に自らの予想を組み立てていきましょう。逆にこの基本を抑えられていないと予想はどんどん間違った方向に進んでいってしまいます。競馬予想に正解はないかもしれませんが、競馬予想の土台には正解があります。土台を間違えるとその上に何を積み立てても意味を成さないというのは、競馬予想に限ったことではありませんね。

【A.全てを予想するのは不可能であることを理解する】

これは僕が何度も強調してきた「競馬には多くの運が絡んでいる」と同義です。予想を究めれば全ての競走結果を説明できると思い込んでいる人がいますがそれは不可能です。

競馬というものは競走であるがゆえに相対評価で順位が決定します。XとYという2頭の競走馬がいるとします。Xという馬がYより速く走れば、XがYに先着するのです。何分で走れば勝ちというわけではなく、どんなに遅いタイムであってもYより0.1秒でも早ければ先着します。しかし巷の予想の大半は、Xという馬、Yという馬、それぞれの絶対評価を追究するものなのです。Xは前走不利があったからパフォーマンスを上げるとか、Xは中山巧者だから今回の中山替わりで評価を上げる、といったものです。これは「Xの馬生において今回が狙い目である」ことを示しますが、「Xが他馬より先着する」ことを必ずしも示しません。例えば能力を数値化できたとして、Xの地力が100、Yの地力が200としましょう。今回Xの出来が絶好で、コースも最適、パフォーマンスを上げるとしましょう(プラス40とします)。一方でYは出来がイマイチ、コースも不向きでパフォーマンスを下げるとしましょう(マイナス40とします)。するとX=100+40=140、Y=200-40=160となります。この場合、絶対評価ではYよりXが狙い目のように見えますが、実はYの方が強いということになります。もちろんこの能力値を把握することはできません。さらに実際には、この上にオッズが絡んできて買うべき馬が決まります(例えばX=140、Y=160であっても前者がオッズ20倍、後者がオッズ2倍であればXを買うべきでしょう)。当然ながらこれらを全て把握することは不可能です。「それを予想するのが予想家だろう」と思うかもしれません。確かにそれはそうですし、どちらが先着しそうかを予想するのが競馬の醍醐味ではあるのですが、僕が言いたいことは「不可能なことは不可能であると知っておくべきだ」ということです。先の例で言えば、XとYが100戦ほど直接対決をしていれば、ほぼ正確にどちらが先着しそうか予想できるでしょう。しかしそれぞれキャリアは10戦ほど、しかも直接対決は2戦しかない、といったパターンで先着するであろう馬を予想するのは限界があることを知っておくべきです。これは裏を返せば、たとえ予想が的中しても運を味方にできた部分が少なからずあることを認識しましょうということです。ある程度予想を詰めても、残りは運に左右されるブラックボックスが存在する、それが競馬であると理解しておくことが肝要です。それができればアーモンドアイにボーナスをつぎ込んで「ありえない!何でアーモンドアイが飛ぶんだ!八百長だ!」と頭を抱えることなどないのです。あのアーモンドアイでさえ今年は1倍台で2度も連を外していることを深く心に刻むべきでしょう。

運の介在を認めたがらない人は「その論理は無茶でしょ…」という結果論を振り回す人が非常に多い。確かに競馬予想は結果論の積み重ねが大事です。血統などのデータは過去の積み重ねから未来を予想するものです。しかしそれを勘違いすると無茶な結果論を振り回すだけの極めて低レベルな予想になってしまいます。たとえば「田代まさしが逮捕された年の有馬記念では必ず1枠が好走している」といった結果論を振り回してスカーレットカラーを買うようなものです。

また、今年の有馬記念の結果を受けて勝ち誇ったように「ほら言ったとおりアーモンドアイは飛んだだろ」と持論を展開する人のほとんどは的を射ていません。アーモンドアイの敗因は発表されている通り「途中でスイッチが入ってハミを噛んでしまい、スタミナが持たなかったこと」でしょう。しかし誰が途中でスイッチが入ってエキサイトしてしまうことを正確に予想しえたでしょうか?僕もアーモンドアイを1円も買いませんでしたが、理由は「中山2500mは本質的に長そうだから断然人気で買うべきではない」というもの。もし単勝10倍ついていれば間違いなく買っていたでしょう。

ひょんなことでスイッチが入ってしまうリスクなんてどの馬にもあること。そういう意味で、今回アーモンドアイが飛んだのはたまたまです。中山2500mが彼女にとってベストコースでなくたって、絶対能力が違いすぎれば勝負になるに決まっています。アーモンドアイを軽視してドヤ顔をしている人は、アーモンドアイが飛んだのはたまたまで、競馬ではそのたまたまが比較的よく起こるという事実をしっかり受け止めた上で、持論を展開してほしいものです。全てを予想することは不可能なのです。これを理解していれば、全てを説明しようとするこじつけありきの予想ではなく、核となる部分はしっかりとした理論で構成しながら運に任せるべき枝葉も存在しているというメリハリの効いた予想が組み立てられるはずです。

【B.妙味の概念を頭の片隅におく】

「オッズを予想に反映させるべきではない」は大嘘で、競馬で勝つためにはオッズを意識する必要があります。例えば今年の有馬記念でアーモンドアイかリスグラシューを買わなければならなかったとして、アーモンドアイ(単1.1倍)・リスグラシュー(単50倍)なら多くの人が後者を買ったでしょうし、アーモンドアイ(単50倍)・リスグラシュー(単1.1倍)なら前者を買ったでしょう。
ではアーモンドアイ(単3倍)・リスグラシュー(単5倍)なら?リスグラシューの強さを知った今ならリスグラシューを買う人も多いでしょうが、戦前にこのオッズならアーモンドアイのほうが美味しく感じていたのではないでしょうか。「的中率と回収率を意識する」(≒妙味を意識する)にあたって、ここが非常に難しいところです。つまり「美味しい馬券を買え」といったところで、具体的に何倍からは妙味があると判断できるのか?という疑問です。先の有馬記念におけるアーモンドアイ1.5倍はどう考えても美味しくない(妙味がない)から少なくとも軸にすべき存在ではないと分かりますが、じゃあ2.5倍なら?と言われると難しいです。リスグラシューの6.7倍は美味しいのか美味しくないのか?これも難しいです。「妙味をどう正確に(客観的に)判断すべきか」というのは考えていかなければならないテーマだなと感じています。

よほどの連戦連勝でない限り的中率だけを意識する予想では競馬で勝てないはずです。「不利を受けた前走の凡走が良い煙幕になっているな」「怪しげな超良血馬が断然人気になっているな」といった妙味の発生に敏感になりましょう。少なくとも皆の目指すゴールは的中率ではなく、回収率であるはずです。断然人気馬の複勝に突っ込んでいては勝ち目がありません。

【C.過去のデータは新しいものほど有用である】

阪神JFでディープインパクト産駒リアアメリアが断然人気を背負って飛んだ翌週の朝日杯FSで面白いことが起きました。ともに僕の好きな血統予想家である亀谷氏と水上氏の意見が分かれたのです。

血統は誰にとっても同じデータですから、その蓄積から導き出されるデータは基本的に同じ方向を向いているはずです。亀谷氏は「阪神JFを見る限りディープの来る馬場ではないのでレッドベルジュールは軽視」、水上氏は「阪神マイルG1はディープの庭なのでレッドベルジュールが本命(前週もリアアメリアが本命)」という主旨の予想でした。確かに阪神マイルG1はマルセリーナ、ジョワドヴィーヴル、ジェンティルドンナ、アユサン、ハープスター、ショウナンアデラ、ダノンプラチナ、サトノアレス、ダノンプレミアム、ダノンファンタジー、グランアレグリアと実に11頭のディープ産駒が制しているようにディープの庭。しかしレッドベルジュールは10着と大敗し、前週のリアアメリアのリプレイを見ているようでした。

この1件は非常に示唆に富んでいて、つまり1年前の馬場よりも1週前の馬場の傾向が有用であったということです。阪神マイルというコースや2歳~3歳春という時期がディープインパクトに向いていることは間違いないと思いますが、中間の雨や気温によって芝の具合は数年前とはもちろん異なりますし、詳細な馬場状態で言えば現在の馬場は、1年前の馬場より1週前の馬場に近い状態であるはずです。1年前の傾向と1週前の傾向が合致していれば難しくありません。でも今回のように1年前までの傾向と1週前の傾向が合致していなければどうでしょうか。どちらを優先すべきでしょう?1年前までのデータのほうが蓄積量は多いはずです。でも最新のデータではありません。

結果的に朝日杯FSでは最新のデータを重視した亀谷氏と過去のデータを重視した水上氏で明暗がはっきり分かれました。今回の1件だけで結論づけるのはもちろん早計ですが、僕は最新のデータを重視することの有用性を再認識できたと思っています(過去○年のデータに基づく予想は非常に多いため、傾向が変わっていた場合、それに早く気付けた者がかなり美味しい馬券を手にすることが出来るというメリットもある)。新しいデータほど今に近いはずですから、新しいデータに重きを置くのは理にかなっています。

以上のABCをおさえていれば、少なくとも勝ち目のない馬券を組み立てることはなくなるはずです。


最新情報をチェックしよう!

競走見解の最新記事8件

>無料メルマガ「青の京大競馬」

無料メルマガ「青の京大競馬」

医学生時代から配信を続けている無料メールマガジン。
重賞の狙い馬をシンプルに配信していきます。
【NEW!】2018年も年間プラス回収率を達成し、単行本発刊決定しました!

CTR IMG