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日本の馬産を背負って立つ社台グループ。
「ノーザン」や「天栄」と騒がれて久しいですが、ようやく「社台ファーム」も復権してきた印象を受けます。もちろんこれらは全て『社台グループ』という巨大グループの傘下に過ぎないわけですが、これらの構成をしっかり整理して認識しておくことは一口馬主を続ける上で不可欠だと思いますし、競馬を楽しむ上でも新たな視点の獲得になります(馬券的なメリットは大して無いと思っていますが…)。
社台グループの創業者は故「吉田善哉氏」。ノーザンテースト、サンデーサイレンスを日本に導入したことでも有名です。彼の亡き後、社台グループは息子である3兄弟「吉田照哉氏、勝己氏、晴哉氏」による共同経営となって現在に至ります。つまり社台グループという大きな母体は、3本柱に分けて捉えると構成が分かりやすくなります。
◆生産牧場とクラブ法人
社台グループの生産牧場は4つあります。社台系のクラブであれば、大半の募集馬がこれらの生産馬です。
3つの柱といいながら4つの生産牧場?と思われるでしょう。
このうち「白老ファーム」は3兄弟による協同運営となっています。つまり社台グループの生産牧場は、照哉氏の社台ファーム、勝己氏のノーザンファーム、晴哉氏の追分ファーム、それに加えて皆で運営している白老ファームの4つで構成されているわけです。
また、白老を除く3つの生産牧場には、直結とも言える一口馬主クラブ法人があり、社台ファーム→社台レースホース、ノーザンファーム→サンデーレーシング、追分ファーム→G1レーシングとなっています。各々のクラブ募集馬の主力は直結の生産牧場になりますが、生産牧場間の行き来もあります(例えばノーザンファーム生産馬が社台レースホースで募集されることもある)。
白老ファーム生産馬は3つのクラブ法人に分配されます。白老生産馬にはオルフェーヴル(白老→サンデーレーシング)、イスラボニータ(白老→社台RH)、ルヴァンスレーヴ(白老→G1レーシング)などがいて、決してマイナー生産牧場ではありません。むしろ、実績として圧倒的に乏しいのは追分ファームです。最も歴史が浅いというのも要因かもしれませんが、繁殖牝馬の質や育成環境も他牧場に比べて劣っている可能性があります。当然ながらそこを母体としているクラブ法人のG1レーシングも実績が芳しくありません。
率の低さも明らかですが、大舞台を意識できる馬がほぼ居ないというのがクラブ法人としては痛手でしょう(社台RHは、勝ち上がり率こそ大差ありませんが社台ファーム生産からデゼルやマジックキャッスルが出ています)。未だにペルシアンナイト、サングレーザーの6歳馬2頭が看板を背負っている状況ですし、最近の追分ファームの目立った活躍馬はルックトゥワイスくらいでしょうか。2018年のシンザン記念を制したヴァルディゼールはG1レーシング所属ですがノーザンファーム生産馬です。
現段階では、追分ファーム生産馬は様子見が妥当な判断でしょう。これからの育成環境の充実に期待します。なお、社台ファームは2019年1月に傾斜をキツくした新育成坂路を完成させており、2019年に1歳であった馬から運用されているとすれば今年2歳デビューを果たす世代からパワーアップが期待できますね。
◆外厩
一大旋風を巻き起こした「ノーザンファーム天栄」(外部記事:【競馬を変えたノーザンファーム天栄】)に代表される外厩施設も社台グループ内で利用場所が分かれています。そもそも外厩とは何か?
競走馬は基本的に生産拠点(社台グループは北海道)→外厩→厩舎という経路をたどってデビューします。未デビュー馬が北海道から外厩に移動(通称”脱北”)すれば、デビューが見えてきたということになります。休養の場合は逆順をたどることなりますが、基本的には厩舎→外厩→厩舎…を繰り返して競馬に使っていくことになります。怪我などで長期休養になる場合は北海道まで戻されますが、基本的には短期放牧=外厩滞在と言えます。
そのため、厩舎が東西(美浦/栗東)に分かれているように、社台系の外厩も東西に分かれています。美浦の厩舎は東の外厩を使い、栗東の厩舎は西の外厩を使うということですね。社台系であれば東が山元トレセン、西がグリーンウッド。ノーザン系であれば東がノーザンファーム天栄、西がノーザンファームしがらき。追分系は独自の外厩をまだ持っていないようなので、上記の外厩を使っているようです。なお、例えばノーザンファーム生産→社台RH募集となった馬は、社台系に属するので外厩としては山元トレセン/グリーンウッドを使用することになります。
上記はあくまで「ざっくり、基本的に」だと思ってください。外厩施設は他にもありますし、例えば堀調教師にように、美浦所属ながらも外厩としてノーザン天栄を使わずノーザンしがらきを使うというケースもあります。
ちなみにキャロットクラブのような社台グループの直属ではないクラブ法人の場合、生産拠点に応じた外厩を使用しているようです。
◆まとめ
「社台グループ」の構成を把握する上で混乱しやすい理由の一つに「社台」という呼称が、全体を指すグループにも枝葉の一つであるグループにも使われているということが挙げられると思います。
「社台グループ」=「社台系」+「ノーザン系」+「追分系」と認識するのが一番簡潔だと思います。「白老」はあくまで生産拠点の一つで、「社台系」「ノーザン系」「追分系」どこにも属さずに、均等に馬を提供していると考えて良いでしょう。
*「社台系」:社台ファーム、社台RH、山元トレセン、グリーンウッド
*「ノーザン系」:ノーザンファーム、サンデーレーシング、ノーザンファーム天栄/しがらき
*「追分系」:追分ファーム、G1レーシング
一口馬主の観点から一歩進んだアドバイスをするなら、
*追分ファーム生産馬は、どこで募集されていようが現段階では様子見が妥当
*「ノーザンファーム天栄」に出資馬を置きたいならば、美浦所属の調教師かつノーザンファーム生産馬(もしくは非生産でもサンデーレーシング所属であれば使用される)を選ぶ
といったところでしょうか。