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参考記事:【Winning FIVEの復権】、【TARGETトライアル】
2020年の上半期が終了しました。それにしても牝馬が強い。
上半期は「データ分析」と称してG1予想記事をできる限りアップしてきました。自分なりの発見があったりしたんですが、正直な感想としては「データ分析だけで競馬予想を完遂するのは非常に困難」だなあ、と。もちろん有用ではありますし、迷った時に理性的な選択を後押ししてくれるとは思います。しかし予想の主軸に据えられるかというと、少なくとも僕レベルのデータ分析では主軸に据えられませんね。データをポンポンと打ち込んだりすると自動的に結論が出る(≒誰が使っても同じ結論が出る)というのは昨今のAIにも通じる部分がありますが、僕もそういう楽な予想ができれば良いなという助平心から「G1データ分析」を初めてみたのです。だって当たる予想をそんな簡単に生み出せるなら誰だって試してみたくなるじゃないですか。
データ予想の本質は「予想の再現性があること」だと思います。つまり、あるデータがあって、それを使って予想をすればAさんが予想してもBさんが予想してもCさんが予想しても本命馬は1つに定まるということです。例えば、あるレースを予想する際に「前走で1400m以下を走っていた馬は来ない」というデータを持っているとします。それを使えば誰でも前走1400m以下を使っていた馬を切ることができるのです。この予想過程は非常に楽です。鍵となる「必勝データ」さえ見つけてしまえば、数分で予想が完結するでしょう。馬柱さえあれば事足ります。ただし、そのデータが本当に「必勝データ」でない限り的中には結びつきません。結局のところ、個人でデータ分析をする限界はここなんです。忙しくて時間がとれない時もあります。誰だって「ワン、ツー、スリー!」で本命馬が導ける美味しいデータがあれば欲しいですよね。でも実際にそんな簡単な話は無く、それどころか付き合い方を誤ると大きな迷路に足を踏み入れてしまうことにもなりかねません。
なぜ個人レベルでのデータ分析が予想の主軸に据えにくいのでしょうか?理由はいくつか考えられます。
1.競馬への臨戦過程が多様化してきている
「あれ?過去のデータでは好走率0%だったのに…」というパターンの大半がこれです。
ここで言う「臨戦過程」には様々な要素が含まれます。生まれてからの育成設備であったり、デビューしてからの外厩設備であったり、G1直行や海外遠征といったローテーションの多様性も含まれます。矢作調教師に代表されるようにチャレンジングなローテを組んだり、アーモンドアイのように厩舎/外厩が一丸となってゆとりをもったG1ローテを組んだり…こういった事は技術の進歩やノウハウの蓄積によって日進月歩です。そしてこの変化を捉えることは、過去のデータ分析ではどうしても困難と言えるでしょう。例えば今年のフェブラリーSではダート2戦目のモズアスコットが戴冠したわけですが、過去のデータ分析から導いた予想ではモズアスコットを1人気で買うなどありえないでしょう。一昔前までは「G1直行は割引き」という風潮がありましたが、昨今は直行馬がバンバン結果を出しています。過去のデータに固執している限り最新の状況はキャッチできないのです。「確かに最初はタイムラグがあるけど、どうせデータが蓄積すればすぐに最新の状況に追いつくじゃないか」と思うかもしれませんが、追いついたときにはさらに状況は進歩しているでしょう。それくらい昨今の「競馬への臨戦過程の多様化」は目まぐるしく進んでいると感じます。
2.字面に表れない要素が確実に存在する
レース映像を見ない限り気づけない要素は間違いなくあるし、さらにそれは予想を的中させる上で非常に重要であるということです。いわゆる「負けて強し」、これをしっかり見極めることはプラス収支の観点からも非常に重要です。字面(たとえば着順)だけで予想を組み立てる層は必ず一定数いますから、着順はふるわないけども見所はあった馬を見出すことは大きなアドバンテージになります。何度も書いていますが、馬券の本質は金の奪い合いですから他人ができていないことを自分ができれば、それは金を生みます。そしてこのアドバンテージを得るために欠かせないのが、レース映像を見返すことです。データだけで組み立てる予想は確かに楽なのですが、このアドバンテージをほぼ全放棄していることになるのでプラス収支を計上する上では不利になります。たとえばラッキーライラックvsクロノジェネシスについて、字面だけ見れば昨年のエリザベス女王杯でも大阪杯でもラッキーライラックが勝っていますから「勝負付けは済んでいる」と判断するのは容易です(僕の話です…)。しかし大阪杯の映像を見れば、内で脚をためたラッキーライラックと外から進出したクロノジェネシスがタイム差無しであれば、少なくとも勝負付けが済んでいると判断するのは早計かもしれないと気づけた……かもしれません。
データ分析って思いのほか時間がかかるんですよね。さらにブログ記事にまとめると相当な時間を食いました。もちろん慣れない部分もあったと思います。でもそれを言い訳にレース映像を見返す時間が大きく減っていたわけなんですが、それはやっぱり良くないなと。もちろんレース映像を見返す時間が減った以上のベネフィットがあれば構わないのですが、少なくとも自分にはそうは思えませんでした。夏からはレース映像の見返しを基盤とし、本当に迷った時に過去のデータ分析を覗いてみるといったスタイルに戻ってみます。