サラバ、人気馬たちよ 前編

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参考記事:【オッズに何を思う】【競馬予想のABC】

「大数の法則」をご存じだろうか?
簡単に説明すれば、充分な試行回数を重ねれば然るべき確立へと収束するというもので、たとえばサイコロを6回振ったところで目は均等に出ないだろうが60000回振ればほぼ均等に出るだろうというものだ。競馬で言えば、年に数回しか馬券を買わない人がトータル勝った負けたで騒いでもそこに信頼度の高い答えは無く、毎週馬券を買えばその人が本来叩き出せるであろう回収率に収束していくだろうし、大衆心理に身を任せて漫然と馬券を買っていれば大衆が行きつく回収率(つまり「負け」)に収束するだろう。

とまあ偉そうなことを言ってみても、競馬は厳密には大数の法則に従わないと思います。そもそもの分散が大きすぎて充分な試行回数も不明だと思いますし。ただ、いま述べたことを意識して損は無いはずです。

競馬王10月号の売れ行きも好調ということで、2回に分けて「なぜ人気馬を敬遠するのか」を掘り下げてみたいと思います。
競馬というギャンブルは、売上金の20%を胴元がとっています(厳密に言えば券種によって差異がありますし単複1.0倍保証もあるので異なりますが説明を簡略化するため以下は控除率20%で統一します)。つまり、全員の回収率を集めて平均化すれば80%に収束するということです。

そのため、基本的に全員が勝つということはあり得ません。誰がか負けるから誰かが勝つ。プレイヤーが戦っている相手はJRAではなく、あなたの隣で馬券を握りしめている僕のようなおっさんなのです。また、全員が負けるということも基本的にあり得ません。

馬券購入者が皆で作り上げたプライズプールを、馬券的中者のみで分配する仕組みを理解していれば「多くの人が的中した場合、1人当たりの配当額は小さくなり、少しの人が的中した場合、1人当たりの配当額が大きくなる」ことは容易に理解できるはずです。

また、競馬で勝つには「大きく勝つときが必要」になります。簡単な例で考えてみましょう。

「当たり」か「ハズレ」と書いたくじ引きが1000円で販売されています。

くじ引きの総売り上げは「当たり」の人へ分配されますが、くじ引きを購入する際に手数料として200円が引かれます。

この1000円のくじ引きを買うことにしました。3つのパターンを考えてみます。

1.全員が「当たり」だった
2.自分だけが「当たり」だった
3.自分を含めた数人が「当たり」だった

1.全員が「当たり」だった
この場合、1000円でくじ引きを購入し、手数料が引かれて払い戻しは800円になります。自分に限らず、くじ引き購入者全員が800円の払い戻しを受けることになり、回収率は80%となります。全員が「当たり」を引いているのに、手数料分だけマイナスになっている状態です。

2.自分だけが「当たり」だった
自分だけが「当たり」(=自分以外は全員「ハズレ」)であれば自分だけが払い戻しを受けることができます。そしてくじ引き購入者の総数が多ければ多いほど、その払い戻し額は大きくなります。例えばくじ引き購入者の内訳が「自分1人+99人のハズレ」であれば、払い戻し額は80000円になりますし、「自分1人+299人のハズレ」であれば、払い戻し額は240000円に達します。

3.自分を含めた数人が「当たり」だった
この状況が最も一般的で、かつ色んなパターンが考えられますが、ここで僕が提示したいのは「自分を含め85人の当たり+15人のハズレ」という内訳になるパターンです。この場合、くじ引き購入者は合計100人ですから手数料を引いてプライズプールは80000円になります。自分だけが当たりであれば、これがそのまま払い戻し額になるのですが、今回は85人の当たりがいるので均等に分配されます。

80000 ÷ 85 = 941

つまり払い戻し額は1人当たり941円で、回収率にすれば94.1%ということになります。負けています。15人もハズレがいて、自分は当たりを引いている…間違いなく勝ち組サイドにいるはずなのに、確かに負けています。

これこそが控除率20%の為せる業なのです。そもそもが大きなビハインドを背負ってスタートするギャンブル、それが競馬なんです。小さく当てるくらいじゃ控除率の壁を超えられず、負け組ゾーンから飛び出せない。そして控除率の壁を少し超えたくらいでもまだ甘い。その程度の利益は1度ハズレを引くだけで消え去り、再び負け組ゾーンへ引きずり戻されてしまうでしょう。

だから控除率の壁をポーンと大きく跳び越える大きな勝ちが必要なのです。ただでさえ控除率という大きなハンデを背負っているのに、安めの配当を狙いにいくというのは「勝つ気がありません」と言っているようなものだと僕は思います。確かに僅かな勝ちでも、的中率を極限まで高めれば理論上は負けないはずです。でも運の要素を排しきれない以上、それは不可能です。

競馬で勝ちたければ、大きく勝つタイミングが絶対に必要となってきます。
これを手っ取り早く実践できるのが「人気馬を嫌うことだ」というだけの話なんですよね。(後編へつづく)


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